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ミレーナ物語(1) 我が国で装着1例目の女性の生の声「天国です」に導かれ

ミレーナ物語(1) 我が国で装着1例目の女性の生の声「天国です」に導かれ

神戸大学名誉教授 丸尾 猛 (丸尾伸之院長の父)

【1992年ミレーナは避妊用の子宮内器具として国内臨床試験開始】

1992年 ミレーナの国内臨床試験開始

2007年 避妊用として薬剤認可(薬事承認)

2014年 過多月経・月経困難症に保険適応(薬価収載)

私とミレーナとの関わりは、ロックフェラー財団研究員として3年間留学した米国ロックフェラー大学 Population Councilから1992年に国際研究委員に指名され、神戸大学病院での国際共同臨床試験用に米国から提供を受けたのが発端になります。

ミレーナは長期避妊用にフィンランドで開発されたもので、低用量ピルにも使用されるレボノルゲストレル(黄体ホルモン)を5年間持続的に放出するよう設計された子宮内システム(IUS)です。1992年当時、日本では非薬剤付加型の子宮内避妊器具(IUD)しかなかったため、低用量ピル的効果とIUD効果を併せ持つ薬剤徐放型IUSのユニークな設計に魅かれ、ミレーナの国内女性における長期避妊の有効性・安全性を確かめる臨床試験を開始したのです。

 

【避妊用のミレーナを使うと経血量と生理痛が劇的に減る?】

そのような折、たまたま安全・確実な長期避妊法を求めて神戸大学病院を受診された女性に日本で初めてミレーナを装着しました。装着後、臨床試験スケジュールに沿って経過を観察していた折、その患者さんから全く予期していなかった喜びの言葉を頂いたのです。

生理の度ごとに怖かった大量出血と下腹痛が嘘のように無くなりました。出血量は目薬を落とすほどに激減し、生理痛もなくなり本当に助かっています。今は天国です

避妊目的にミレーナを使用したこの1例目の女性が、たまたま子宮筋腫による過多月経と生理痛で長く苦しまれてきた女性であったのです。 このことから本来避妊用に開発されたミレーナは生理の度ごとに出血多量と強い痛みで苦しむ女性たちのの苦しみから女性を解き放つ力があると想い至らせました。

 

【ミレーナは子宮筋腫のある女性にも使用できるの?】

ミレーナは安全・確実な長期避妊を目的に開発されたものであり、1992年当時、子宮筋腫や腺筋症合併女性への子宮内避妊器具(IUD)装着は禁忌であるとの見方が主流でした。実際、私がPopulation Councilの国際共同研究委員会で、子宮筋腫・腺筋症による過多月経・生理痛の治療にミレーナを応用したいと、その臨床試験の計画案を発表した際、ミレーナ使用経験が豊富なフィンランドの教授から強い反対の意見が出ました。

しかし、座長のPresidentから「ミレーナ装着によって月経量が目薬を落とす程度に激減し、生理痛も消失して、本当に助かっています。」との患者さんの生の声には説得力があり、耳を傾けるべきであるとの指摘があり、反対意見を抑えて計画が承認されたのです。こうして過多月経・生理痛で苦しむ子宮筋腫・腺筋症合併女性へのミレーナ使用の臨床試験が神戸大学病院で始まります。

まさにミレーナを契機としたこの女性との出会いに感謝しています。この女性からの生の声が力となり、生の声に導かれて、過多月経・生理痛で苦しむ女性の治療法としてミレーナを応用する臨床試験にゴーサインが出たのです。

ここからミレーナ物語が始まりました。

(付記:この時のゴーサインから22年後の2014年ミレーナは過多月経・月経困難症に保険適応となりました。)

 

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(次項につづく)

ミレーナ物語 (2)  過多月経が劇的に改善するミステリーの解き明かし – 北浜駅すぐ大阪市西天満の産婦人科レディーバードクリニック