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ミレーナ物語(4) 生理の苦しみから救うミレーナの強みは?欠点は?

神戸大学名誉教授(産科婦人科学) 丸尾 猛

ミレーナは2007年に自費診療(避妊)で認可され、2014年に過多月経・月経困難症の治療として保険適応となった。

ミレーナは低用量ピルの高い避妊効果と子宮内避妊器具(IUD)の長期間にわたる避妊効果を併せ持つ製剤である。1992年に米国から提供されたミレーナを避妊目的に我が国で初めて装着した女性から、生理時の恐ろしい出血と痛みがなくなり、「今は天国です」との喜びの言葉を頂いた。この時はじめて、ミレーナは過多月経・月経困難症の治療法になるのではと思い立った。

まさに、患者さまから学び、教えられて、生まれた治療法である。

当時は子宮筋腫女性へのIUD装着は禁忌とされていた。しかし、患者さんの「今は天国です」との生の声が力となって、例外的に、ミレーナを子宮筋腫・腺筋症による過多月経の治療に応用する臨床試験が承認された。それから22年要したが、2014年に生理で苦しむ女性にミレーナが保険適応となった。

ミレーナは、生理で苦しむ女性が使用すると、過多月経・月経困難症の有効な治療法となるが、元来、健常女性の長期避妊法として安全性が保証された製剤であるのが強みである。

子宮筋腫や子宮腺筋症による過多月経・月経困難症はミレーナ装着によって速やかに改善する。特に、子宮腺筋症では脱出が少なく、治療効果は抜群である。ただ、子宮腔内に突出して発育する粘膜下筋腫は例外で、ミレーナの脱出や予期せぬ大出血をみることがあり、注意が必要である。

ミレーナは5年間有効であるため、例えば40歳時に装着し、5年毎に入れ替えて閉経となれば、過多月経との闘いに勝ったことになる。子宮筋腫・腺筋症に対して手術療法をすすめられてきた女性は手術から確実に逃れられる。

ミレーナは5年に1回交換するだけで安定した効果を発揮し、治療用ピル服用時に懸念される飲み忘れの心配がなく、血栓症リスクもないのが強みである。

GnRHアゴニストの皮下注射や鼻腔投与による偽閉経療法では、エストロゲンが低下するため骨量減少への注意が必要で、6か月限定の投与を繰り返すことになる。

ミレーナではエストロゲン低下が起こらないため、骨量減少のリスクがないのが強みである。

閉経の前後には、エストロゲン低下に伴い様々な更年期症状に見舞われることが多く、更年期症候群の治療にはホルモン補充療法(HRT)が有効である。この際、子宮がある女性にエストロゲンのみを投与すると子宮体がん発生の恐れが高まるため、黄体ホルモンの併用・補充が不可欠となる。

しかしミレーナ使用中の女性に更年期症状が出てHRTが必要になった場合には、ミレーナから黄体ホルモンが徐放性に放出されているため、黄体ホルモンの補充は必要なく、エストロゲンのみの投与(貼り薬、クリーム)でよいのが強みである。

ミレーナ使用中に閉経となった際には、そのまま有効期間(5年間)装着しておけば、ミレーナから放出される黄体ホルモンが子宮内膜の増殖を抑え、子宮体がん発生の予防になる。これもミレーナの強みである。

ミレーナの欠点は?

欠点は装着から数か月間しばしば不規則な極少出血がみられることである。

この欠点さえ許容できれば、ミレーナは過多月経・月経困難症で苦しむ女性にとって副作用が少ない優れた長期治療法になり、子宮筋腫・腺筋症への手術を回避することができる。これがミレーナの強みである。

(次項につづく)

コラム:ミレーナ物語