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ミレーナ物語 (3) 装着により筋腫は縮小するのか?を経て、いよいよ認可

2022.03.08

神戸大学名誉教授(産科婦人科学)丸尾 猛

 

ミレーナは過多月経・生理痛を劇的に改善するが、子宮筋腫合併女性に装着した場合、筋腫は縮小するのか?

の問いは真っ先に浮かぶ疑問である。筋腫合併女性の過多月経・生理痛がミレーナで劇的に改善したことから、当初、筋腫はミレーナ装着によって縮小するに違いないと推察した。しかし、ミレーナ装着前と装着1年後の筋腫のサイズをMRIで調べてみると、症状は見事に改善しているものの、筋腫サイズは小さくなったのが1/3、変わらなかったのが1/3、大きくなったのが1/3で、ミレーナの筋腫サイズへの影響は定かではなかった。このことから、ミレーナによる過多月経・生理痛の改善は、筋腫の縮小によるものではなく、前項で述べた通り、ミレーナから放出される合成黄体ホルモン(レボノルゲストレル)が子宮内膜に直接作用して、子宮内膜を萎縮させる結果であることが判明した。

一方、ミレーナの長期避妊法としての有効性と安全性は、ミレーナの特性を理解し企業として協力いただいた製薬会社の支援のもとに、全国69施設が参加した多施設臨床試験を行って検討した。その結果、ミレーナは日本女性にとっても安全で確実な長期避妊法であることが確認された(丸尾 猛ほか:診療と新薬 2006 ;43 : 1157)。

このように、ミレーナは、安全・確実な長期避妊法であるだけでなく、過多月経・生理痛で苦しむ女性には生理に伴う苦しみから解き放つ治療法となることが分かり、女性のQOLを高めるに違いないと考え、我が国への早期導入を目指した。賛同いただいた製薬会社の尽力によって、

ミレーナは1992年の臨床試験開始から15年後の2007年に認可(避妊用)され、22年後の2014年に過多月経・月経困難症に保険適応となった。

患者さんの生の声に端を発した22年間の軌跡に感無量である。

臨床試験で、ミレーナから放出される合成黄体ホルモン(レボノルゲストレル)の筋腫サイズに及ぼす影響が定かでなかったため、筋腫の発育に黄体ホルモンはどのように関わっているのかを知りたい衝動に駆られた。そこで、子宮筋腫細胞の培養系をつくり、培養された筋腫細胞の増殖能とアポトーシス(細胞死)に及ぼす黄体ホルモンの影響を調べることになった。ミレーナの臨床試験で得られた知見が黄体ホルモンの筋腫発育に及ぼす影響を細胞レベルで調べる基礎研究へと導いた。このミレーナによって導かれた基礎研究が私のライフワークの重要な位置を占めることになる。

2007年4月に京都で主催した第59回日本産科婦人科学会の会長講演では、「師に導かれ、患者に学びて」と題して、ミレーナ装着1例目の患者さんの生の声が引き金となったミレーナ・過多月経・子宮筋腫・黄体ホルモン物語を述べた。患者さんから学んだことは多大であった。まさに出会いに感謝である。この学会の終了翌日に、東京で報道関係者を対象にミレーナの発売記念講演を行った。

いよいよ日本女性へのミレーナの使用がスタートした。

これがミレーナ物語の中締めである。

(次項につづく)