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ミレーナ物語(8) 橋渡し研究で大きな戦力となった外国人留学生

神戸大学名誉教授(産科婦人科学)丸尾 猛

1991年Population Council国際研究委員会メンバーに指名され、1992年からミレーナの臨床試験を神戸大学病院で開始した。当時Population Council理事であられた坂元正一先生(元東京大学産科婦人科学主任教授)から、「日本は米国留学で大変お世話になってきた。これからはアジアの留学生を日本が受け入れる番である。受け入れの財源支援はするので、留学生を受け入れて指導をされたい。」とのお話を頂き、先生の口添えで奨学寄附を大学に入れてもらえることになった。

時を同じくして、中国での講演に招かれ、歓迎夕食会の場で隣の席の先生から愛弟子を留学させたいので受け入れてほしいとの要請を受けた。要請者が坂元先生の友人であった偶然も重なり、中国・成都からの産婦人科医が私の受け入れた最初の留学生になった。その時の要請者は、20年後にケープタウンで開催されたFIGO(国際産婦人科連合学会)総会でFIGO Vice President立候補者4名の一人として決戦投票で私と票を争うことになった。予期せぬ成り行きに驚き、人の出会いの不思議を痛感させられた。

2002年から神戸大学医学研究国国際交流センター長を兼務したこともあり、中国、フィリピン、インドネシア、パキスタン、サウジアラビア、エジプト、チェコ、スイスから多数の留学生を迎え入れることになった。特に、フィリピン、中国からは同時期に各2-3名の留学生が大学院生として頑張ってくれた。

研究経験がない状況での受け入れであったが、神戸大学産科婦人科学教室の准教授、講師、助教のスタッフが熱心に指導に当たってくれたおかげで、言葉の壁を乗り越え、短期間で実験手技を習得し、見事な研究成果を挙げてくれた。

多数の外国人留学生の加入があった頃は、ちょうどミレーナの臨床試験で浮かび上がった疑問を基礎研究で解明したい思いに駆られていた時期であった。

新しい研究テーマが次々と生まれ、得られた研究結果について留学生と討議しては次のステップに進むという日々で、多忙を極めたが、大変充実した時期であった。

ミレーナの臨床で得られた知見から基礎研究へと動き、基礎研究で得られた知見を臨床へ橋渡しする研究において、留学生たちは基礎研究を深める上で大きな戦力になってくれた。

その研究成果は、留学生を筆頭著者としてJournal of Clinical Endocrinology and Metabolismに15論文、Human Reproductionに3論文が掲載され、選択的黄体ホルモン受容体修飾剤(SPRM)が子宮筋腫細胞の発育を抑制し子宮筋腫の新しい治療薬となりうることを世界に先駆けて提示した。優れた研究実績に対して医学博士の学位が授与され、それぞれの国で教授に就任し活躍中の仲間が多いのは嬉しい限りである。

国の内外の仲間との出会いを振り返り、私の好きな言葉「生かされて、生きる。」を改めて実感し、お世話になった仲間に感謝し、良き出会いに心から感謝するこの頃である。

(写真は2003年に11名の外国人留学生と一緒に神戸大学病院前で撮ったものである。)

 

コラム:ミレーナ物語